2025年4月から、新たに「育児時短就業給付金」という制度がスタートしました。この制度は、育児と仕事の両立を目指すママやパパが、短時間勤務(時短勤務)を選択した際に生じる収入減を補うための給付金です。育児休業中に支給される「育児休業給付金」とは異なり、働きながら子育てをする人を直接支援する新しい仕組みとなっています。
制度ができた背景
厚生労働省の調査によると、第一子出産後に約3割の女性が離職している現状があります(令和5年「第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況」より)。復職したくても、「フルタイム勤務は難しい」「時短勤務だと収入が減り家計が不安」などの理由で離職せざるを得ないケースが多く見られました。
こうした課題を踏まえ、国は「時短勤務でも安心して働き続けられる環境を整える」ことを目的に本制度を導入しました。
対象となる人・利用条件
この制度を利用するには、以下の全ての条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること(正社員・パート・契約社員も含む)
- 2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をしていること
- 育児休業から時短勤務で復帰した、または時短勤務開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
※被保険者期間とは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月、または賃金支払いの基礎となった時間が80時間以上ある月を指します。
支給額とその仕組み
【原則】
時短勤務中の賃金の10%相当額が毎月支給されます。
例:時短勤務中の賃金が20万円の場合、給付金は2万円です。
【調整が入る場合】
- 基準額超えの調整
「育児時短開始前6か月の平均賃金(月額)」を超えないように給付金が減額されます。
例:基準賃金25万円、時短後賃金24万円の場合、24万円×10%=2.4万円ですが、「24万+2.4万=26.4万」で基準額(25万円)を超えるため、給付金は1万円に調整されます。
- 支給限度額超過の調整
「賃金+給付金」の合計が支給限度額を超える場合、超過分が減額されます。
2025年8月からの支給限度額は月471,393円で、毎年8月1日に改定されます。
例:時短賃金46万円、給付金6万円の場合、合計52万円となり、支給限度額を約4万8,600円超過するため、その分が減額されます。
【受給できない場合】
以下のいずれかに該当すると給付金は支給されません。
- 時短前と比べて賃金が減っていない場合
- 賃金が支給限度額(2025年8月以降は471,393円)以上の場合
- 給付金が最低限度額(2025年8月以降は2,411円)以下の場合
支給を受けられる期間
育児時短就業を開始した月から終了する月までが対象です。
ただし、以下の場合は支給対象外となります。
- 子どもが2歳に達した場合(誕生日の前々日までが対象)
- 産前産後休業、育児休業、介護休業のいずれかを開始した場合
申請方法
育児時短就業給付金を受け取るためには、基本的に事業主(勤務先)がハローワークへ申請を行います。
- 賃金の届出・受給資格の確認・支給申請
時短勤務を始める時、会社が「開始時の賃金」を届け出て、あなたが給付金の対象か確認し、さらに支給の申請をします。この3つの手続きは同時に行うことも可能です。
- 特例:育児休業明けに時短勤務を始める場合
同じ子どもについて育児休業給付を受け、そのまま時短勤務に移行するケースでは「賃金の届出」は不要です。
- 申請のタイミング
原則として、2か月(2か月分の対象月)ごとに支給申請します。ただし、被保険者(あなた)が希望すれば、1か月ごとに申請することもできます。また、希望すれば本人が自分で申請手続きを行うことも可能です。
制度のメリット
- 短時間勤務による収入減をカバーできる
- 家計の不安を和らげながら早めの職場復帰が可能
- フルタイム以外の多様な働き方を選びやすくなる
よくある質問(FAQ)
Q1:パートタイムでも支給対象になりますか?
A1:週20時間以上勤務し、雇用保険に加入していれば対象です。
Q2:時短勤務を延長したい場合の給付は?
A2:会社制度で時短勤務を3歳や小学校就学前まで延長できても、給付金は「子どもが2歳に達するまで」で終了します。
Q3:2025年4月以前から時短勤務をしている場合でも支給対象になりますか?
A3:はい、2025年4月1日より前から2歳未満の子を養育するために育児時短就業に相当する時短勤務をしている場合でも、要件を満たせば2025年4月1日を「育児時短就業開始日」として支給対象となります。
まとめ
子育てと仕事の両立は大変な挑戦です。フルタイム勤務が難しくても働き続けたいママ・パパにとって、この制度は大きな支えとなります。気になる方は、まず職場の担当者や最寄りのハローワークに相談してください。
※本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。最新情報は厚生労働省公式サイト等でご確認ください。
出典:厚生労働省『「育児時短就業給付金」を創設しました』